エアコン室外機からの騒音に関する損害賠償等請求事件

受忍限度を超えるか否かはどのように判断するか
・加害行為の公益性の有無,態様,回避可能性等はどのように判断されるか
どのような騒音調査・測定結果を採用するのか

【概要】

学校のエアコン室外機からの騒音が受忍限度を超えるとして、近隣居住者が、撤去及び損害賠償請求し一部認められた事件

【判決】

・学校はエアコン室外機から発する騒音を原告の住宅敷地内に50デシベルを超えて到達させてはならない
・学校は原告らに対し各10万円を支払うこと
・訴訟費用はその半分を被告が負担する事

【事実】

・原告は夫婦で学校の南側に隣接する二階建住居に居住している。
・学校の南側には校舎で使用するエアコンの室外機が56台設置されている。
・室外機は騒音規制法における「特定施設」に該当し、学校は「特定工場等」に該当する
・学校ではエアコンを設置する際に「屋上の強度が低い」等の理由によって南側に室外機を設置した。
・原告はエアコンから発せられる騒音を苦痛に感じ被告学校の職員や市の環境課、市議会議長などに対し複数回にわたり訴えた。
・学校は原告からの苦情を受けて4度にわたって1000万程度の費用をかけて防音壁設置工事をした。

【騒音調査の結果】

向日市および原告から騒音測定業者への依頼によって都合5回騒音調査が行われた。
1回目測定・向日市:52~55デシベル
2回目測定・向日市:51.6デシベル
3回目測定・向日市:45デシベル程度
4回目測定・向日市:(立ち合いあり)最大数運転時53デシベル程度
5回目測定・騒音調査業者:(被告に知らせずに測定)
:(暗測定) 46デシベル
(稼働中①) 51デシベル
(稼働中②) 50デシベル
(稼働中③) 52デシベル

【原告の主張】

・複数回の調査・測定によって騒音基準値50デシベルを超えている
・騒音によって不快感、圧迫感、神経過敏、集中力、思考力の低下、胃液の分泌減少、自律神経失調、体調不良、慢性疲労、ストレスによるアレルギー症などが生じている

【被告の主張】

次のことより受忍限度を超えていない。
・室外機を南側に設置したのは仕方がなかった。
・多額の費用をかけて防音工事をした
・近年はエアコンを少しでも動作させないように努力している
・エアコン使用規定を定めて使用期間や設定温度を定めている。

【裁判所の判断】

・人はその居住場所において平穏な生活を営む人格的利益を有している。
・しかし生活するうえで騒音にさらされることは避けられないので、騒音が違法であるというためには、被害の性質,程度,加害行為の公益性の有無,態様,回避可能性等を総
合的に判断し,社会生活上,一般に受忍すべき限度を超えているといえることが必要である。
・学校は特定工場であるため、騒音規制基準を超えている場合は受忍限度を超えていると認めるのが妥当。
・本件の受忍限度の判断の基準は「昼間において50デシベル」である。
5回目の騒音測定結果を採用すると3回測定したうちの2回では基準を超えている
・騒音の大きさはエアコンの運転台数や設定温度、外気温などの要因によって変化するが、少なくとも基準を超える騒音が発生している。
・学校側の対策は騒音値が50デシベルを超えるとわかった後においても防音工事およびエアコンの使用規定を定めたのみである。
・学校はエアコン使用規定を定めているが厳密には守られていない。
・原告らが受けている精神的苦痛は到底軽視できるものではない。
・学校は住居の並ぶ南側以外に室外機を設置できたはずである。

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