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マンション等集合住宅における上階騒音(床衝撃音)の現状と対策方法

マンション等集合住宅における上階騒音(床衝撃音)の現状と対策方法

マンションなどの集合住宅では上階騒音(床衝撃音)が多く問題にある

マンションなどの集合住宅において「静かさ」は要求が多いニーズのひとつです。各種生活騒音の中で入居者がもっとも気にする騒音として上階からの床衝撃音があります。新築分譲マンションであれば、購入希望者が事業者側へ性能を尋ねることも一般的になっています。このため、建物の設計時には上階騒音の予測が重要であり、実際に建物を建築する際にはさまざまな床衝撃音の低減対策が行われています。
マンションなどの集合住宅において、上階騒音トラブルが発生した例を見ると、その原因は大きく下記の二種類(あるいはその両方)に分けられます。

・建物の遮音性能
・入居者の生活態様

普段コミュニケーションの機会が少ない上下階の入居者間で生じる問題であることや、下の階側で発生する音の程度が上階では分かりにくいこともあり、時として深刻な事態となり紛争や事件に発展することもあります。さらに、建物が完成して入居者が生活を始めた後からは、建物に関して追加の床衝撃音対策を行うことが技術的にも困難な場合が多いことも問題の解決を難しくしています。
上下階間の構造は建物躯体の床スラブとともに、音源質となる上階側にはカーペット、木質フローリング・畳・乾式二重底といった床仕上げ材・床仕上げ構造が、また、受音側(下階側)には石膏ボード二重天井などの天井構造が付随した構造となっている。
実生活における上階騒音の発生源は、物の落下、子供の飛び跳ね・歩行音、いすの引きずりなど様々である。実生活の中で発生している騒音の大きさを評価する際にはこうした生活音を対象に測定を行うことがある。

上階騒音が軽量衝撃音か重量衝撃音かによってその対策は異なる

比較的硬質で軽量の衝撃音(軽量衝撃音)に関しては、衝撃が直接加わって振動エネルギーの発生源となる床仕上げ材、あるいは床仕上げ構造での対策が特に有効である。また、下の階受音側での石膏ボード二重天井による遮音層の形成なども有効な低減対策となる。
重量衝撃音は薄い床仕上げ材による低減効果はほとんど見込めず、建物躯体の床スラブによる対策がもっとも有効である。また、発生する床衝撃音は低い周波数成分が支配的であるため、乾式二重底や二重天井なども中空層を含む部位によって増幅されてしまうこともある。上階騒音における、重量衝撃音に関する床スラブの対策としては、スラブの質量と剛性の増加、および床スラブ周辺の境界条件として曲げ拘束の増加などが挙げられる。

近年における上階騒音(床衝撃音)対策

近年の上階騒音(床衝撃音)の対策としては、主に下記三種類に大別される
・建物躯体である床スラブによる対策
・床仕上げ材による対策
・床仕上げ構造および天井構造による対策
軽量床衝撃音に対しては床仕上げ材、床仕上げ構造による対策が有効である。マンションなどの集合住宅では従来のカーペット仕上げよりも木質床仕上げが入居者に好まれるようになり、それに伴って木質防音フローリングや乾式遮音二重床の開発が行われてきた。
重量床衝撃音に対しては、集合住宅での床スラブの面積大型化に伴い、床スラブを厚くする工法との採用と、重量床衝撃音の予測精度の向上に向けた技術開発が行われてきた。
床スラブ振動応答を低減する技術としては、動吸振器またはダイナミックダンパーと呼ばれる技術も重量床衝撃対策として適用されている。
また、二重天井の空気層ばねによる共振を低減し、音響放射を抑制する技術として、調湿用の木炭や、粒状の樹脂または無機物を天井裏に敷き込む対策についても検討が行われている。

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