業務用乾燥機の低周波音被害について損害賠償が認められた事件

判決

・被告は原告に100万円、及び支払済みまで年5分の割合の金員を支払うこと
・訴訟費用は1/6が被告の負担

事実

・原告は店舗兼居宅で暮らしていた。
・被告は繊維及び繊維工業品の売買、製造加工等を行う株式会社。
※以前調停が行われ不調となっている。

騒音調査の結果

原告建物の店舗内での低周波音の測定数値は、オールパス※で六五曲、周波数毎での最大音圧は、20mのときの57dBであった。
※2Hzから100Hzまでの音圧レベルの合計

原告の主張

・被告の操業開始後、イライラ、頭痛、不眠、食欲減退、肩から指先にかけての痺れ、耳鳴り等の症状が生じるようになった。
・上記の諸症状のため様々な病院に通院した。
・被告に苦情も申し入れた。
・精神的、肉体的被害は被告工場内乾燥機の低周波音に起因する。
・乾燥機から生じている低周波音は社会生活上の受忍限度をこえる。
・被告の乾燥機の設置状況は建築基準法にも違反している。
・乾燥機の差止請求を受け入れるべきである。
・不法行為による損害賠償請求権から金300万円及び支払済みまでの遅延損害金の支払いを求める。

被告らの主張

・苦情については健康被害に対する情報を原告から聞いていない。
・低周波に関する苦情を申し入れるようになったのは調停の不調以後のことである。
・低周波音の調査結果は認める。
・原告が健康被害の原因とする低周波音は通常耳に聞こえない音であり、低周波音が原告の訴える諸症状を引き起こすことはありえない。
・上記から乾燥機が発する低周波音で原告の訴える症状が生じることはありえない。
・被告工場は建築基準法に違反するものではない。
・乾燥機から生ずる低周波音は受忍限度の範囲内である。

裁判所の判断

・本件は被る損害と侵害者側の犠牲等の諸事情を比較考量した上で決すべきものである。
・社会生活や企業活動を通じて騒音、振動が発生することは、ある程度はやむを得ない。
・乾燥機を移転すると、他の機械類も移転することになり、被告工場全体に影響が及ぶことは避けられない。
・建築基準法は行政取締法規であり、差止請求権に直結するわけではない。
・原告の建築基準法に違反するという主張には理由がない。
・原告の様々な症例と通院記録は認められる。
・医師からの証言、調査結果から、原告の症状は本件乾燥機から発生する低周波音によるものであると認めるのが相当である。
・短時間での実験結果では低周波への慣れが生じて被害を受けないという結果もあるが、原告のように長時間の暴露により上記の症状が出ることは認定されるべきである。
・左耳の聴力障害と本件低周波音との因果関係は不明であり、本件低周波音による障害とまでは認められない。
・原告は生活妨害のみでなく身体的影響を受けており、その程度は軽からぬものである。
・低周波音は、社会生活上受忍すべき限度を超えるものというべきである。
・期間に照らすと、原告の被った精神的、肉体的な苦痛を少するには100万円をもってするのが相当である。

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